The Dream of the Blue Pines

Experience live music and performances in London (and in other places...)

Tuesday, May 16, 2006

Sonny Rollins


13 May 2006
Barbican Hall, London



Truly wonderful gig by the ever-energetic, legendary sax player – I felt honored just being able to be there.

「ある時期、ジャズは町でいちばんかっこいい音楽だった。中でもとびっきりかっこいいのはテナー・サックス奏者だった。どうしてテナー・サックス奏者がかっこいいかというと、そこにソニ-・ロリンズとジョン・コルトレーンが存在したからである。」(村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ2』)

50年代を共に駆け抜けたジョン・コルトレーンは1967年に亡くなってしまい、マイルス・デイビスなど同時代の大物が次々この世を去って久しい中、今も現役で「モダン・ジャズ最後の巨人」と呼ばれているのがソニー・ロリンズ。
とはいえ、御体75歳のライブに行くのは、少し不安も。昨年マッコイ・タイナーのコンサートに行った時、素敵ではあるけれど、どこか過去の栄光の抜け殻みたいな感じがあったので。その不安を煽るかのように、ステージにあがるソニー・ロリンズは足を引きずって歩き、齢を感じさせる…

しかし。ひとたびサキソフォンを手にすると、そんな不安はかっ飛んでしまいました!!いやあ、すごいぞ、このおじいさん。何がすごいって、そのピリっと新鮮な音楽性!すかっとする音色!‘この歳でもまだ吹ける’とかいうレベルではなく、またかつての栄光の曲を繰り返して金儲けするような音楽家ではなく、今もどんどん音楽性を追及してる、本当の意味での「現役」なのです!

今回のコンサートは、まだ市販されていないアルバム『Sonny, Please』の曲を中心に、スタンダードなども交えながらの二部構成でした。その新譜の一曲、テンポのよいブルースは、ライブ後に知ったのだけれど「Nishi」という曲で、長年にわたって交流のある日本人のベース奏者西山満氏にちなんだタイトルだそうです。(その名がつくエピソードは、公式サイトで披露されています)
ビートにのって盛り上げるかと思えば、しっとりメロディーを歌い上げ、ソニー・ロリンズのサキソフォンは次々にいろいろな表情をみせますが、圧巻は第二部の「In a Sentimental Mood」というスタンダードの曲で展開した、15分を超えるほどの長いソロ。もう自由自在の即興で、時には茶目っ気たっぷりに日本でいうワラベ歌のようなメロディーを挿入して笑わせ、それでも全体のクールさは失わない…
そしてクライマックスは代表作のひとつ「Don’t Stop the Carnival」。ラテンなリズムも楽しい名曲で、足腰の弱りなど感じさせずに、ステージを縦横無人に吹きまくる!

バンド・メンバーのソロも堪能したけれど、やはりソニー・ロリンズのやりとりが絶妙。Kimati Dinimuluのパーカッションとリズミカルに掛け合うかと思えば、Bob Cranshawの静かなベース・ソロでは、ささやくようなソフトなサックスの音にしびれました。

「ロンドンに来れて嬉しいよ。映画『アルフィー』の撮影できた時(60年代)を思い出すよなあ。50年代にはいろんなミュージシャンとセッションしたものだ…」
長いキャリアの中で、何度か壁にぶつかり引退を宣言したりしつつも、いつも新しい姿で復活してきたソニー・ロリンズ。最近のCDのジャケットの赤いジャケット姿のかっこよさにも驚いたけれど、生で見るそのエネルギーには圧倒されました。何ヶ月も前からチケット完売で、心待ちにしていたロンドンのファンも、最後は文句なしの総立ち。ここに立ち会えてよかった!というライブ。
「また来るよ!」と去っていくソニー・ロリンズ。伝説はまだまだ続くのです。

ソニー・ロリンズ公式サイト
(ライブの動画、新譜の試聴もできます。聴いてね)
http://www.sonnyrollins.com/

西山満氏のサイト
http://www.nishiyamajazz.com/c-board/c-board.cgi?cmd=all;page=2;id=

Wednesday, May 10, 2006

Janis Siegel: A Thousand Beautiful Things


21 April 2006
Birdland - NYC, USA


せっかくニューヨークに来たからジャズを…と思ったものの、なかなか響くものがない…唯一実現したのが、ジャニス・シーゲルのソロ・コンサート。
ジャニス・シーゲルは、マンハッタン・トランスファーのメンバー。男女2名ずつの実力派グループで30年以上のキャリアを誇り、ジャニス自身9つのグラミー賞を獲得しています。
このマンハッタン・トランスファーのコンサートに私が初めていったのは、おそらく1980年前後。私は若干16歳でありました。音楽好きの父が見つけて、家族で行ったコンサート。正統派のスタンダードジャズをモダンにアレンジし、ジャズなどほとんど聴いたこともなかった私たち家族も楽しめる楽しいステージ。しばらくは来日のたびに出かける「家族行事」になっていました。
10代の私とニューヨークの接点だったマンハッタン・トランスファーの代表的な曲のひとつが『バードランド』。最近はご無沙汰していたけれど、時を越えて訪れたニューヨークで、ジャニス・シーゲルの歌を老舗ジャズ・クラブの‘バードランド’で聴く…というのもいいかな?

今回は、ジャニス・シーゲルがソロ・リリースしたアルバム「A Thousand Beautiful Things」からの曲が中心の構成です。アニー・レノックス、ビョーク、スティービー・ワンダーなど、ポピュラーなミュージシャンによる曲を、ジャニス・シーゲル風にアレンジ。ジャニスはもう十分‘おばちゃん’だけど、キュートさもあり、かつ貫禄の実力。歌詞を大切に歌い、それに聴衆も笑ったり反応したり…バードランドは老舗ながら、ヨーロッパのクラブに比べるとピカピカに磨かれて、客の反応もストレートというのが、アメリカ的な印象。ちょっとディナーショーという雰囲気なのが私は苦手ですが、ジャニスだから許そう…

と思っていると、ジャニスが真骨頂を見せました。別のふたりの女性歌手がステージに上がった時です。この女性達、ステージの脇の席に座って、すごく大きなリアクションをとっていたので、「アメリカ人って派手だよなあ」と思っていたのですが、そのひとりは初代マンハッタン・トランスファーのメンバー、Laurel Masseでした。もうひとりの大柄な歌手(名前を失念。Ann-Hampton Callerway?)と共に、「3人でガールズ・バンドを組みたいと思ってます!」。
Laurel Masseは、私が聴き始めた頃には既にマンハッタン・トランスファーを抜けていた歌手ですが、この3人ってちょっと普通のアイドル・ガールズ・バンドにはない迫力…いきなりアカペラでスキャットを唄いだします。
ジャニスもそれまでの‘ディナーショー風’にわかりやすく歌い上げるのではなく、他のふたりにあわせてベースリズムを担当したり、即興でソロを加えたり、マンハッタン・トランスファーで鍛え上げたハーモニーの妙を存分に発揮。CDでは聴けない、ライブならではの盛り上がりをみせ、この一曲で‘来てよかった’と思わせました。


コンサートホールではない、こうしたジャズ・クラブのよさは、観客と歌手との距離の近さ。ステージも目の前でintimateな雰囲気。終了後も会場で知り合いと歓談したり、CDを購入した客にサインをするジャニスに、私が「東京で初めて聴いてから、26年になります」と話すと、「ひゃあ、すごいわねえ。また行くわよ、東京、6月に!ロンドン?じゃ5月に会いましょう」。トイレにいけばローレンがいて、一緒に手を洗いながらおしゃべり。
ふらりとニューヨークに来て、こうして自由に話せて…16歳の頃の私には、想像もできなかった気楽さ。大人になるのも悪くないものです。


http://www.janissiegel.com/

http://www.manhattantransfer.org/