The Dream of the Blue Pines

Experience live music and performances in London (and in other places...)

Friday, March 31, 2006

Hugh Masekela : A Jazz Odyssey - Music & Migration

30 March 2006
Barbican Hall


Energetic performance by the South African legendary trumpeter – Music beyond political, racial, and cultural differences.

Hugh Masekelaのステージ登場と同時にしみじみ感じたのは、「この人は本当に愛されている」ということでした。人気があるというレベルを超えて、‘会いたくてたまらない’という熱気が、会場を満たしていたのです。
この南アフリカの‘ジャズ・トランペットの神’といわれるHugh Masekelaについて、ろくに予備知識もなく会場にいたのは、私くらいのものでしょう。そんな無知な私にも、1曲目から‘愛される理由’がわかりました。めっちゃくちゃ楽しいのです。素直にまっすぐな音を響かせるトランペットを手に、歌い踊る彼の姿はなんだかキュート。その周囲の南アのミュージシャンたちが繰り出すメロディーは、太陽の光満載。ぐずぐずしたロンドンの曇り空を、ぱっと明るく暖かくする底抜けな陽気さがあります。

40年のキャリアをもち、ポール・サイモンなど世界の様々なミュージシャンと演奏してきた大御所Hugh Masekela。でも、その間の南アの激動の歴史を思えば、陽気さの裏に大変な苦労があった事は、説明されなくても予想がつきます。前半は楽しく明るく盛り上げたコンサートも、中盤から少しその‘影’をみせます。
たとえば「この曲は、低賃金労働で命を落とした世界の全ての人に捧げます」と始めたSTIMELAという曲は、地方から汽車で炭鉱へと運ばれたアフリカの労働者たちを唄う曲。汽笛や走る列車の音を模して唄う彼自身は、アパルトヘイト全盛のヨハネスブルグに生まれ、音楽に生きるために何十年も亡命生活を強いられ、その間も母国の人々に絶大な人気を得てきたそうです。
その彼が、ロンドンのイーストエンド出身でラップとジャズを組み合わせたトランペットのSoweto Kinchや、南ア出身ボツワナ育ちの歌手Sonti Mndebele、亡命中にガーナで出会った若手キーボードのKwame Yeboahなどをゲストに迎えて、「音楽は、政治や肌の色を超えてつながる!」という言葉には説得力がある…と私には思えたのです。

しかし、「音楽で世界はひとつ」と盛り上がるのもナイーブな理想主義なんだろうか…と感じさせる事がありました。誰よりも早く立ち上がって踊っていた私の友人Sが、突然がっくりテンションを下げた時です。それはイスラエル人のピアニスト、Yaron Hermanが紹介された時でした。Sの父はイランから亡命した政治活動家で、彼女は英国育ちながら目下精力的に反戦活動に参加しています。私は音楽を通じて出会ったので、その政治理念についてはよく知らないし、個人と出身国の政治は無関係に音楽家として評価したいのですが。でも‘政治は無関係’とはいっても、急に座り込む彼女とその(政治活動家の)友人の横で、私がピアニストに盛大な拍手を送るのも(素晴らしい演奏だった)、それなりに勇気のいる‘政治行動’になってしまいます。それでも私にSが議論を吹っかけてこないのは、私が日本人だからでしょう。

そんなSをよそに会場はますます盛り上がります。そしてHugh Masekelaが、「何十年も投獄され、それでも出てきた時に『恨んで自国に火を放つような過ちは犯さない。私達は国を築くのだ』といった我らが‘老人’を讃えよう」と、最後に歌うBring Him Back Homeは、私でも知っていた有名なネルソン・マンデラ賛歌。その頃にはSも機嫌を直し、会場は総立ちに。

アパルトヘイトが崩れ、民主化された南アフリカに戻り、若手音楽家育成に力を注ぐHugh Masekela。その音楽的才能や人気もさることながら、8時過ぎから夜11時半近くまで、ゆるむことなくステージをこなすエネルギーにあっぱれ。会場側が(終わらないのではと)ハラハラしているのがわかるほどで、本当にすごい67歳です。
そして彼の演奏を聴くために、肌の色も年齢も文化背景も異なる人々が集まって、意見の違いを自由に口にでき、かつ同じ場で平和に一緒に楽しめる…それこそが、大事にすべきことなのかもしれません。

Dhafer Youssef: Divine Shadows

30 March 2006 / 19:30
Barbican Hall

Again, the collaboration with Norwegian musicians.

Dhafer Youssefは、歌手というより楽器だ…と思わされます。木の幹のような体からの深い声は、時に胸を叩いたり、口に手をかざして様々な音色になりますが、その真骨頂はホールに響き渡る伸びやかさ。最初に聞いた時は本当にびっくり。
チュニジア出身パリ在住のウード(oud:アラブ風のリュート、琵琶に似た楽器)演奏者であるDhafer Youssefの音楽のルーツは、Sufiというイスラム系の音楽ですが、その伝統的な枠を超え音楽のジャンルも超えた、精力的なコラボレーションをしています。
私は昨年イタリア人のジャズ・トランペットとの演奏も聞いたのですが、今回は2004年に初めて聞いた時と同じく、ノルウェーのバンドとのコラボレーション。デジタルを駆使した、無機質なまでのビートが、叙情的なDhafer Youssefの歌声のもつある種の土臭さを中和させるので、私には心地よい組み合わせです。このバンドのArve Henriksenのトランペットは、こんな音が出るんだ…と思わされる、抑えたまるで尺八のような音色で、歌声とうまく絡んでいきます。

今回は、このDhafer Youssefはいわば「前座」。次の南アの大物Hugh Masekelaファンが集う会場で、本人も「僕には早く引っ込んでほしいだろうけど」とジョークを飛ばしていましたが、皆も充実した‘前座’に喜んでいたようです。

*Dhafer Youssefの日本語表記はいろいろあるようですが、英語では「ダファー・ユーサフ」と呼ばれています。

Thursday, March 30, 2006

Dhafer Youssef : Digital Proficiency

18 Nov 2004
Queen Elizabeth Hall, London


This is the review of the first Dhafer Youssef’s gig I went in 2004…
今夜Dhafer Youssefのコンサートに行くのですが、初めて聞いたのは2004年でした。

On a lucky night, you know from the first note that the concert will take you to a world you’d never seen before. The evening with Dhafer Youssef was one of those experiences. The rich, deep sound of his oud opened up a vast dessert landscape in front of me. Then his soaring voice gave you wings of your own and the journey began.
Digital Proficiency is the Tunisia-born musician’s third album, a collaboration with Norwegian musicians, such Eivind Aarset on electric guitar. The electric sound moves us forward, while Youssef’s voice is reaching out for the sky. The drum beats by Rune Arnessen often left behind the familiar rhythms, such as 4/4 , and moved on to a more complicated, yet natural flow…
East meets West, some may call their performance. But as the journey continued, I realized it was wrong. As my mind flew over the desserts, suddenly Mongolian fields appeared, with the sounds reminded me of a Chinese composer, Tan Dun (Music director of the film Crouching Tiger, Hidden Dragon). Then arrived the sound of Japanese Shakuhachi flute – out of the trumpet, played by Arve Henriksen. Not that I felt nostalgia towards the traditional sound of my country. My joy was at hearing that, if a trumpet could be a Shakuhachi, East and West are not two separate cultures.. Once Youssef put everything on one, huge landscape, he made us realize how artificial the boundaries on maps are. What divides East or West, or countries, became invisible, and our minds could travel on the Silk Road, without a passport control.
In the current international situation, being an Arab often puts Youssef in the political spotlight. He didn’t make any political statement during his concert, but after the evening you would see the world differently, with a bigger and wider view. For someone who confronts the boundaries between East and West on a daily bases, it was a very emotional and touching experience.

Wednesday, March 29, 2006

Brad Mehldau

13 February 2006
Barbican Hall, London

The uncompromising trio, with the new drummer, Jeff.


今輝いているジャズ・ピアニストといえばブラッド・メルドー…と思っているのは、もちろん私だけではなく、コンサートは満員御礼。
会場はバービカン・ホール。金融街のシティに70年代に作られたコンプレックスで、劇場・コンサートホール・映画館をロンドンにしてはめずらしい高いマンションが取り囲むというスタイル。
聴衆は年配もいますが30代くらいも多く、ちょっと‘トレンディ’な感じです。(隣には、格好つけた彼氏に無理に連れてこられたらしい、音楽に興味なさそうな美女が。)

7時半開始のコンサートは、前座なし、休憩なし。大掛かりなショーアップなく、トリオがステージにあがり、さらりと始まりました。
別に何か技を見せるわけじゃないけれど、最初一音からぴしっと決まってる…

最初の曲は新譜『Day is Done』 のタイトル曲。その後、メルドーのオリジナルで、まだタイトルがついてない曲が2曲。その後、また『Day is Done』 からRadio Head のKnives Out、Jimmy HeathのCTAなど…と続きます。

ブラッド・メルドーのソロアルバム発表は95年で、それから10年ちょっとで今は35歳。私が最初に聞いたのは、サキソフォンのジョシュア・レッドマンのレコーディングに参加していた頃で、当時は名前も知らなかった。でも、おそらくこの辺りが転機になって、いつの間にかhouse-hold nameとなっていました。

今回ちょっと楽しみにしていたのは、ドラムスのJeff Ballardで、この新譜からトリオに加わったメンバー。私は、以前ジョシュア・レッドマンのElasticのロンドン公演で‘助っ人’として参加していた彼のドラムを聴いたことがあり、そのシャープなビート、手で叩いたりしてかもし出すいろいろな音色、エネルギッシュなパッションに感動。だから、ブラッド・メルドーのトリオに参加ときいて、楽しみにしてたのです。
今回はアコースティックなウッド・ベースとピアノとのトリオなので、Elasticのときのように豪快にたたきまくるというスタイルではなく、抑えて、でもいろんな凝った音色を出す、細やかな技を見せるという感じ。でもCTAのドラムソロあたりでエネルギー炸裂。

一方、メルドーと長年組んでいるLarry Grenadierの方は、存在感のあるウッドベースで、メルドーとの息もぴったり。紺のシャツにカーキのチノパンという服装、背格好もなんだか似ていて、淡々とした双子のよう。そんなクールなふたりに、エンジ色にオレンジの水玉のシャツを着た天真爛漫なジェフが加わり、なんだかエネルギーをもてあましてアンバランスなような、同時に楽しさも加えてるような。

ブラッド・メルドーのピアノの、独特のスタイルを言葉で説明するとしたら…スタンダードを弾いても、その解釈がすごく新しく、シャープになる。「じゃあ、A、B、そしてAに戻りましょう」という、いわゆるジャズのスタンダードなコンポジションではなく、どこに行くか予測のつかない展開。おそらくクラシック出身と思われる2-hand-playerなので(‘左手でコード、右手でメロディ’的ではなく)、音に広がりがあり、ちょっと予測をはずした音色をいれてくる…
よくビル・エバンスと並び称されるそうです。
終了後に、ジャズ・ピアニストであり教師でもあるDaveに会場でばったり会ったので、彼の評を聞いてみると、「Uncompromising(妥協しない)演奏」とのことでした。