The Dream of the Blue Pines

Experience live music and performances in London (and in other places...)

Wednesday, July 19, 2006

Chris Potter

18 July 22006
Pizza Express, London

With Craig Taborn (keyboards), Adam Rogers (guitar) and Nate Smith (drums)

ピザエキスプレスというのは、チェーン展開のピザレストランですが、ソーホーにある店は地下にジャズクラブがあります。多分老舗のジャズクラブだった物件がピザ屋さんになったのでは?今回は、アメリカ人の友人がロンドン滞在中なので、一緒に行こうという企画。そもそも、ライブジャズのあるレストランで隣同士になったことで知り合った友人なので、ジャズにいこう、となったのです。レストランオープンは7時45分、音楽は9時から、休憩をはさんで11時半まで。ステージも近く、大きさはいい感じのスペースです。料理はピザかパスタになってしまいますが。クリス・ポターのサックスを聴くのは、実は初めてです。何年も前、私がごひいきのジョシュア・レッドマンの話をしていたら、「クリス・ポッターが最高」と対抗されたことがあったので、一度聞いてみたい…と思いつつ、機会を逃していました。でも、こんな小さな会場で演奏するのは珍しいメジャーなミュージシャン。今回は、11枚目のアルバム『アンダーグラウンド』発売に伴うツアーで、ほぼオリジナルながら、Radioheadのカバーなども入っています。全体の印象としては…うまい、と思うものの…なんとなく、ぐっと掴む感じのないコンサートでした。どのミュージシャンも上手いのだけれど、聞いているうちに引き込まれるというより、なんとなく聞いているうちに集中力が離れて、別のこと考えたりしてるのです。それは友人や連れたちも同じ意見。ふつう、第一セットが終わり、2回目になるとぐっと盛り上がったりするけれど、それもなく。腕は確かなんですけど。私は、第一曲目から、なんとなくルースな感じだなと思っていました。クリス・ポターがまとめてるというより、たとえばドラムソロとかギターソロになると、完全にお任せって感じ。もちろん実力あるからそれでいいんだけど、たとえばソニー・ロリンズあたりだと、皆が自由に演奏しててもどこか中心でぴしっと繋いでる、全体の統一感がありますが、今回の場合はソロが脱線しても誰も乗ってもいかないし、脱線しっぱなし…という感じなのかな?聴き手も、時々「あ、いいな」と思いながらも、ふっとまた気持ちがそれていく…ちょっと気になるのは、ウエイターやウエイトレスの、あまりに音楽に関心がない感じ。コンサートが始まってすぐ、エアコンの調節をするウエイターのリモコンのピーピー鳴る音が止まらないし。コンサート中も、静かなメロディーがもうすぐ終わる…という’感動的’タイミングに、いきなり前に立って「デザートいかがですか」と声かけてくる。うーん、これはジャズクラブのウエイターというより、ただのチェーンのピザ屋のバイトだなあ…前回はそんな風には感じなかったんだけどな。もしかしてミュージシャンのノリが悪いのも会場のせい?いずれにせよ、私は友人と再会してジャズを聴く、という目的は果たせました。

Tuesday, July 04, 2006

The Bee - Noda Map and Soho Theatre present

28 June 2006
Soho Theatre, London

written by Hideki Noda and Colin Teevan
based on the story by Yasutaka Tsutsui
Cast: Tony Bell, Kathryn Hunter, Hideki Noda, Glyn Pritchard


ソーホー・シアターというのはロンドンのど真ん中にある小さな劇場で、若手劇作家の作品などを上演したり、実験的な作品が多いことで有名です。6×11メートル、140人収容というスペースで、座席予約はないので、ギリギリで到着した私達は最前列へ。文字通り俳優の目と鼻の先という感じで、「観客参加型舞台だったらどうする?」とちょっと不安に。

さて、今回のThe Bee は、野田秀樹のオリジナル劇の英国公演…というか、野田秀樹が初めて英語で書き下ろした劇です。筒井康隆原作の短編『毟りあい』をベースにアレンジした物語で、登場人物には日本人の名前を残しながらも、全て英語の上演。野田秀樹以外のキャストは英国人です。
ごく普通のサラリーマンMr. Idoが帰宅しようとすると、脱獄犯が妻子を人質に家にたてこもっている!なにやら胡散臭い警察、メディアの攻勢などにあいながら、自らその脱獄犯の妻に説得してくれと交渉に行ったMr.Ido。でもいつの間にか自分が、その脱獄犯の妻子を人質に立てこもることになり…普通の人の人生が突然変化し、本人も変貌していくという物語。

非常に限られたスペースを使っての上映なので、ガラスの衝立を使ったミニマルな舞台で小道具を駆使して場面を展開し、俳優4人も主役以外は、ひとり何役もこなします。だから演技力を問われる芝居ですが、その目玉は主役のMr. Idoを演じるのが女性、名優キャサリン・ハンターで、脱獄犯の妻を演じるのが野田秀樹、というところです。野田秀樹のストリッパーの女も面白いのですが、Mr. Idoの演技がすごくて…実は予備知識なく行った私は、女だと気づかなかったのです!(イスパニア系の小柄な男性かと思ってた)。
そのふたりが演じるから、‘レイプシーン’も意味をもちます。そして、後のふたりの俳優が、刑事や新聞記者から、6歳の子供まで演じます。動きも激しくて、スローモーションで反り返ったり、縦横無尽に走り回ったり、肉体労働な舞台です。

私は日本で野田秀樹の劇を見たことはなかったのですが、なぜかロンドンでは、2003年に日本語の劇を英訳上演した『Red Demon(赤鬼)』に続き2度目です。『Red Demon(赤鬼)』は野田秀樹の英国デビューで、もっと大きな劇場で公演されたのですが、正直いって評判はもうひとつでした。野田秀樹の演技自体はよくても、ストーリーがちょっと子供っぽい印象。英国ではありきたりなテーマだったのと、英語上演だと野田秀樹の持ち味である日本語の言葉遊びの面白さなどが出ないのかな?と思ったものです。

今回の劇は、前半はスピーディーでコミカルに観客をつかみ、途中ちょっとショッキングなレイプや子供を傷つけるシーンがあり、やがてスローにオドロオドロしいようなテンポになっていく…という流れ。うーん、変な話…なんだけれど、演技の集中力は落ちないので、面白い。最初から英語で書かれているから、流れも自然なのかもしれません。

そして小劇場というスペースもよかった。日本では演劇界の大御所である野田秀樹が、原点に戻って奮闘しているような感じがありました。そして自分の足元に、女装した野田秀樹が太腿もあらわに倒れている…なんて、日本ではなかなか体験できないことですね。
(夢の遊民社の大ファンだった友人が聞いたら、悔しがるだろうな。)
こうやって、日本の芸術家も体当たりして、世界を広げているんだ!という感じです。


公演について(日本語)http://www.nodamap.com/02thebee/gaiyou.htm

劇場について(英語) http://www.sohotheatre.com/